大判例

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東京高等裁判所 平成元年(ラ)419号 決定

職権をもって調査するに、本件については、原決定に先立つ平成元年六月九日に抗告人から原審裁判所に対し本件競売申立の原因となった根抵当権の不存在を理由とする競売開始決定に対する執行異議及びこれに伴う競売手続停止の申立がされているところ、原審裁判所はこれらに対してなんら応答することなく、原決定をしたことが明らかである。

ところで、執行停止を命ずる裁判の正本の提出があったにもかかわらず、これを無視して不動産の売却許可決定をした場合には、民事執行法七四条二項、七一条一号の規定(一八八条により担保権実行による競売手続に準用)により、これを右決定に対する執行抗告の理由とすることができるものとされているが、担保権の実行による不動産競売手続において、担保権の存在はその基本的前提をなす事柄であるから、その不存在を理由として執行異議が申し立てられ、しかもそれに付随して執行停止の申立もされている場合には、まずこれら申立の当否について判断することが要請されているものと解すべきであり、これら申立があったにもかかわらず、これに対する応答がまだされていない状態にあることもまた、同法七一条一号にいう、競売手続を続行すべきでない事由に該当するものといわなければならない。もし、このように担保権の不存在を理由とする執行異議及び執行停止の申立があるにもかかわらず、これに対して応答することなく売却許可決定をすることが許されるとすれば、前記のように右理由により右決定に対し執行抗告を申し立てることはできないものと解され、また、代金納付による買受人の不動産の取得は担保権の不存在によって妨げられないものとされている(同法一八四条)ことに照らし、右執行異議の申立権は有名無実に帰するのであって、その不当であることは明らかである。

(丹野 加茂 新城)

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